脱サラから飲食店開業、飲食店経営まで

都内アメリカンダイニングバー開業から現在

19.物件探しから決定まで③

そしていよいよ、あらためて物件を絞って選んでいく時期になってきました。

2014年10月から探しはじめ、2015年に入ったあたりからです。内見を重ねていくなかで、少しずつ自分の中で自信も持ち直してきていました。

同時に、3ヶ月間の中で新たな人脈も出来てきていました。親身になってくれる不動産屋さんや、内装業者さん、厨房機器メーカーさんやその他などなどです。人との繋がりについては、自然と集まってきたんだと当時は思っていましたが、今思い返すと、開業に向けて動く行動が人に伝わり繋がっていったものだと感じています。

開業に限らず何事もそうですが、「念ずれば通ず」「意思あるところに道はひらける」ということでしょうか。

一番純粋に、単純に、自分の店を作ることに全力で向き合って、行動して、それを楽しんでいたと今思います。

18.物件探しから決定まで②

初回の内見後、ふたつやり方を変えることにしました。ひとつは、まずは飲食店の居抜き物件(営業中も含む)に内見を絞ること。もうひとつが、自分の店舗に必要な機材、資材を寸法を調べてリストして、それを持って内見すること。

また、居抜き物件であれば、多少希望と違う物件もまとめて見るようにチェックを増やしました。

理由は、とにかく飲食店物件に慣れること、そしてその中で自店舗のイメージを組み立てること。でした。

毎週毎週、数多くの退去物件を見て回りました。写真を撮り、寸法を計り、キッチンの機器を確認して。五年経った今でも、印象的だった物件はいくつも記憶に覚えています。なかでも千歳船橋、都立大、経堂、恵比寿、蒲田。この5つの物件は、それぞれ私にさらに考える情報を与えてくれました。

約二カ月は、こうして居抜き物件をターゲットにして内見を組む中で、実際の飲食店のリアルな外状況をはじめて意識して見るとこができ、自分がやりたい店とのイメージを重ねたり、イメージをもっと具体的にしたり足したり、そういう活動ができました。

そして最終的には、今までみた物件を大い参考にしながら、より細かく自分の理想な店舗図面をラフで自分で合理的に作れるようになりました。

多くの物件を意識的に見ることで、そこに足りないものや自分に要らないものなどを考えていき、私のイメージがどんどん完成に近づいた、そんな感覚でした。

17.物件探しから決定まで①

さて、話を私自身に戻します。

多国籍料理店で勤務しながらの開業準備です。

今回は物件探しについてです。

10月とともに物件探しサイト数件に登録、同時に物件選びをはじめました。

すでに条件はある程度決めていたので、それを軸に内見申し込みを行い、実際に仲介業者の方と待ち合わせて物件をみていく作業です。日程は私の休みに合わせて週一日二日程度にしました。多い時は一日で4、5軒を見させていただきました。

一番最初に気になって案内してもらったのは、目黒駅と不動前駅の中間地点当たりにある、小さな事務所が退去した後の物件でした。正直な感想は、はじめて物件の中を見させていただいて、何も具体的なイメージができませんでした。

まず第一に、事務所の居抜きであったこと。これだとド素人の私にはイメージが難しかった。

そして第二に、私自身の中に自分の店のイメージがしっかりと具体的に出来てなかったのかなと。

事務所の居抜きを見ても、どこに何をどんな風に配置すれば飲食店になるのか、それすらわからなかった。ダクトや水回り、空調なんかもわからないし、自分のやりたいカウンターやソファ、バックバーがどう配置するのか、イメージできませんでした。

初めての内見は、ウキウキした気持ちと期待が大きかった分、反動でかなり自信を失ってしまいました。

こんな状態で、開業が本当にできるのか、決められるのか、自分のやってきたこと、今やっていることに間違いはないのか、帰り道にとても暗い気持ちになったことをよく覚えています。

 

16.物件について.その②

今回はスケルトン物件について。スケルトンとは前店舗の残置が全く無い、基本的にはコンクリート剥き出しの裸の状態の物件です。あまり遭遇しませんが、新築物件もそれに入ります。

初めて内見する物件がスケルトンだと、まったくイメージが湧かないと思います。また、いくら自分で事前に図面を描いていても、同じ20坪でも縦長なのか正方形なのか、などで全く違ってきます。

それでも私は結果的にスケルトン物件に決めて契約しました。スケルトン物件のメリットは、まずは何と言ってもその自由度です。当然何もないところからなので、自由にレイアウトし、自由に壁を作り、自由に内装を施すことができます。そして完成後は、当然退店した店とは異なる新しい店であるということを喧伝できます。

反面、居抜きに比べた際には、費用が大きく変わってきます。冷蔵庫やオーブンといった重機器からフライパンや包丁類、皿やフォーク、メニューブック、内装で言えばテーブルやカウンター、椅子やソファなど、とにかく全て購入して揃える必要があります。通常の重飲食系(ダイニングバー、バル、居酒屋等)は、スケルトンなら坪あたり60〜100万程度が目安かなと実感しています。私の店舗は15坪ちょっとですが、内装と重機器で約1000万ほどかかりました。ついでに書くと物件取得で賃料29万物件ですが、約200万かかっています。その他諸々で約1300万ほどを一度に支払いました。結構勇気のいる金額でした。

また内装業者の選定から始まり、実際に打ち合わせ、図面を決定して、工事が開始され、都度手直しや再打ち合わせをして、同時に自分で細かな備品などは業者や合羽橋などで購入する、など自分で全て主導して決めていかければならないタフな作業があります。私自身、自分は決断力がある方だと思っていたのですが、この段階のひとつひとつの決定事項はとても苦しく迷いながらの約2カ月でした。これについてはまた後ほど。

物件について大きく2パターンを連続して書きましたが、1店舗目を探す時には、特に焦らず丁寧に沢山見ることお勧めします。居抜きや営業中物件なら、ここがいいここは違う、自分のポイントが見えてきますし、その後にスケルトンを見ればまたイメージが膨らんでくると思います。

物件選びから決定まで、すでに自分自身の責任がはじまっています。せっかく苦労して頑張って貯めてきた資金です。ここならやれる!ここでやりたい!そう納得してつぎ込める物件に出会うまで、どれだけ不動産業者に面倒くさがられても、根気よく探すべきだと思います。

 

 

 

15.物件について.その①

前々回、物件について書きました。

私の物件契約について書く前に一般的な物件選びについて、私見も交えて記します。

その前に、物件を契約し取得する際にかかる費用について。おおよそ目安ですが、借りる賃料の8カ月から1年分程度を最初に支払う必要があります。30万円の賃料の物件なら、240万から360万くらいでしょうか。具体的には契約金1カ月、前賃料1カ月、仲介手数料1カ月、保証金半年から1年分、くらいでしょうか。

それを踏まえて、もう一つ。業態や利益率にもよりますが、ひと月に賃料の10倍を売り上げられるかが目安になると定説としてあるので、30万円の物件ならひと月に自分がそこで300万を売り上げられるイメージがつくか、見る上で重要だと思います。

物件選びに話を戻しますが、近年多いのがいわゆる居抜き物件です。ちなみに私はスケルトンで入っているので、私見が主になりますがご容赦下さい。

居抜き物件のメリットは、なんといっても初期費用の圧倒的な安さです。前に入っていた店のものをすべてそのまま引き取ってはじめる、それが居抜きの本質なので、物件取得費用以外にかかる費用はほとんどありません。譲渡費用として100万程度設定している店舗がほとんどですが、これについては値引き交渉も十分可能です。自分の看板さえ付け替えれば各届出などがすんでいれば翌日からでも営業できます。

反面デメリットとしては、まず機材についてはすべて中古品であること。内装が当然前の店と同じであること。残置という表現で表される前店舗の全ての物が、いらなければ逆に自分で費用を払って処分する必要があること。などでしょうか。

中古機材を使うことについては、正直判断が別れるというか運があると思います。入って翌月壊れてしまうこともあれば、10年20年すべて保つ場合もあるはずです。前の店舗が例え1年で退店したとしても、賭けであることに変わりはないでしょう。私の隣の物件もスケルトンから入ったインドネシア料理店が二年経たずに退店して、すぐにフレンチが居抜きで入りましたが、半年経たずに食洗機とその配管が不良でうちの店にまで水漏れして結構な費用がかかっていました。聞くと、インドネシア料理店のずさんな工事が原因ではないかと。

居抜き物件は、結論として、どうしても資金が用意出来ない人や使う機材の少ない重飲食系ではない方にオススメです。ただ全部がそうでないにしても、潰れた店をそのまま使う覚悟は、しっかりと持った上で選択するべきだと思います。自分の店になるわけですから、言い訳は効きません。中途半端に前の店のものを入れ替えてやろうとすると、余計に費用がかさむこともあるかと思います。従って居抜き物件を見る際には、すでに自分でいるいらないのジャッジができる状況でないと難しいかと思います。もともと予定にないのに、グリドルがあるからステーキもやろう、とかセラーがあるからワインに力を入れよう、というのは難しいですし、そううまくはいかないと思います。

いずれにしても根気よく数多く物件を見ること、それが大切だとは思います。

 

 

 

14.スタッフについて

物件探しと同時に、店のスタッフについても行動をしました。

私自身、自分の店でバーテンダーと料理人の両方を同時にポジションとしてやるのは現実的でないと考えていました。また、自分は接客側にまわりたいとも考えていたので、厨房を任せられるスタッフが必要と考えました。

そのため、事前にひとりスカウトするつもりでいたので、10月にその彼と会い、『一緒にやらない?』と声をかけました。

彼は開業スクールの同期で、私より7歳下でしたが、すでに半年ほど前にサラリーマンを辞めて都内のバルのキッチンで勤務している状況でした。

彼自身も当然将来は開業したい、という希望があるので、独立開業まで料理を任せたいという話をしました。

彼を選んだ理由は、非常に真面目でひとつひとつの作業が丁寧な印象があったから。また出会って6年間、定期的に連絡を取り合い、ある程度気心が知れていたからでもあります。

彼は彼で、新しい環境でメインで試したい、という思いや、開業を間近で見たい、という思惑もあったのかと思いますが、ともあれ快諾してもらいました。

そして早速、翌11月より一緒に少しでもやる方がよいと、彼がバルを辞め私の勤務する多国籍料理店でいっしょに働くようになりました。

当時の心境は、単純にホッとして安心した、というのが本音でした。心の隅には、ひとりでやる不安から逃げたい気持ちがあったのかも知れません。

ともあれ、それ以来約3カ月間彼とともに同店で働きながら、メニューの絞り込みなども打ち合わせするようになりました。

あくまでも私が彼を雇用する形で、共同経営ではありませんでしたが、最後に来て相談できるパートナーを得た気持ちは、何か特別な安心を与えてくれました。

そして、物件契約を迎えることになります。

 

 

13.物件探し

サラリーマン退職後、多国籍料理店勤務とともに、まず物件探しをはじめました。

今、飲食店物件専門の会社も多数ありますし、多数社に登録してもデメリットはないと思います。通常の住宅選びと同様に、エリア、坪数、家賃、階数、最寄りからの時間、現況など、細かく設定して検索できます。私は15〜25坪、家賃50万以内、自宅から自転車で通勤できるある程度のターミナル駅、競合店が少なく、路面店、などの絞り込みをしていました。

気になる物件を一括チェックして内見させてもらうことも可能ですし、対応がいいなと感じた業者の方とはその後も定期的に物件を紹介してくれるように依頼したりもしました。また、不動産屋が内装屋と繋がっている場合もあり、物件を見ながら自分の好みによりますがレイアウトなどのアドバイスやイメージを指南してくれる場合も数回ありました。

ひとつ感じたのは、基本的にはこちらから積極的にアプローチしないとどの業者側からもあまり提案はないということ。私が1店舗目の素人だからなのか、対応客が多いからなのか、理由はわかりませんが、とにかく自分からガツガツ行くことが大事でした。

10月から探しはじめ、まだ営業中の物件、退店したままの居抜き物件、すべて空の状態のスケルトンなど限定せず何でも気になるものは内見させてもらいました。合計すると3カ月で30から50件内見しました。実際に内見して気に入った物件は、更に周辺を歩いたり違う時間帯に訪れたり、いろいろと調査もしました。

人気の恵比寿、自由が丘、表参道、下北沢、などから蒲田や五反田、経堂、豪徳寺などなど、本当にいろんなエリアに行きました。土地勘があまりないエリアも多いので、東京の地図を買い、位置を確認しながらの物件選びでした。

物件は人気エリアなら毎週のように新しい店舗物件が出てきます、それだけ潰れて退店していく方が多いということも感じました。

また、たくさん見ることで、より自分の店はどういうレイアウトにしたいのか、ということが明確になってきます。営業中物件と居抜き物件は特にそうで、見れば見るほど非常に参考になりました。

反面、たくさん見過ぎだせいか、なかなか完璧な希望に合う物件がなく、わからなくなってきてしまう状況もありました。今思えば、本当によい物件は世に出ることなく次にまわされ、借り手がすぐにつかない物件がサイトで募集されるので、どれも一長一短で決め手にかけたのは当然かもしれません。

自分で譲れないもの、妥協できるもの、それを明確にしていかないと最初の物件は決められないのかも、と途中からは感じるようにもなりました。

結果的に物件を決めたのは翌2月、探しはじめてから約4カ月経っていました。